洗剤

少し悩んでオレンジジュースをパネルから選択すると、オレンジジュースとオレンジソーダと甘くないオレンジソーダが選択肢として現れた。オレンジジュースを再度選択して、3つの注ぎ口から指定された右の台座にグラスを置き、注ぐボタンを押した。

テーブルに戻ると、話題は引き続き柔軟剤の香りについてだった。

ダウニーを使ってる同級生は、ダウニーなしには彼の話題が上がらない程度に、親の選んだ日用品によって外部から自己を確立させられている。「ダウニーのくせして、」「ダウニーよろしく、」「ダウニーJr.」いつの時代も舶来品が庶民に浸透されるのには時間がかかる。

「あ、おれ、6時から塾だからあと10分で行くわ」1人がそう言うと、集まったメンバーはたちまち予定を思い出し、立ち上がる。

特に何もない予定のない僕は、もう終わりかと名残惜しくも、話題が変わったことに内心ほっとしていた。

子供の頃ダウニーのテレビCMに出ていた。それを僕も家族もずっと誇りに思ってたし、家族では今でも話題に上る。

 

でも今はナノックスだ。ナノックスはいい。なんだか詳しくは知らないが使う洗剤の量も少なくて済むらしいし、何より匂いがあまり無く清潔な気分になるので清々しい。