目の前に広がる隅田川の川上、青い永代橋の向こうから小型船のエンジンの長い低音が聞こえ、その手前の緑色の隅田川大橋を走る車の音と、車両が通るたびに、橋の接続部分の上を過ぎる際に立てるカタンカタンという音が聞こえる。河川の遊歩道には、幅の狭い草むらが川に沿って続き、そこからはコオロギの鳴く声が、断続的に聞こえている。川の奥の方から走ってくるランニングの足音が、聞こえてくるような聞こえてこないような音量から、ゆっくりと音に輪郭を与え、実際に近づいてくる。

地上には陽の光が届いて、明るく広がっているものの、空には薄い灰色の雲が広がり、今日の天気の行方の不安を感じさせている。薄い雲は、絵で見るような青い空に白い雲が配置されている、というビジュアルからはかけ離れており、雲があるというより、空の青さから灰色へのグラデーションを作るように、さらに漂う。その灰色の雲の下には、先に出した絵のように、白くて固そうな雲がポツンポツンといくつか浮かんでいる。

灰色の雲のグラデーションは片側だけで、もう片方の切れ目は鱗雲になっていて、こちらは天気への不安を感じさせず、秋の気概を空に持ち込んでいる。