夢の審査会

「冷麺を出品しましょうよ!」

汗を額に滲ませながら、冷麺を口にした弟子がいつものように威勢よく声を張り上げた。私はこの中華屋の亭主で、この弟子はこの店の新メニューを出すとなると、いつも審査会に出品した方がいいと声をあげる。

「火鍋を出品しましょうよ!」

冬はこうだった。

そもそも私には審査会というものが分かっていない。それがどこで行われ、何によって運営されているのか分からない。最初に聞いたときに、ふと想像した、テレビ番組のセットに数人の審査員がそれぞれ花で縁取られた審査員席に座り、睨むとも微笑むともいえない、緊張感のある雰囲気でこちらを見つめている。私の手は震え、両手で掴んだトレイに乗ったラーメンが波紋を立てている。といったような光景 が、今でも話題に上がるたびに頭に浮かぶ。

 

初めはあまりに突拍子もない発言と捉え、それでも言い続ける彼に強く注意したこともあったが、今では正直のところ感謝している。大きい声で審査会に出した方がいいと言われると、胸の中に熱い気持ちが湧き上がってくる。湧き上がるというか、じんわり遅いくらいのスピードで自信が体に宿りだす。