椋鳥

黄色い嘴と爪、顔は白、頭頂から体にかけては湿った土のような色の椋鳥が3羽、足元の草むらをガサゴソと調べている。

そのうち2羽を追いかけあいっこをしており、忙しそうにしているが、残りの1羽は悠然とシロツメクサに食べられるものがないかと見回りを続けている。3羽の関係性は分からない。

なぜそれが椋鳥とわかったかというと、つい先日に古井由吉の短編集を読んでいたからで、そのなかに「椋鳥」という作品があり、無知にもなんとなくムクッと大きな鳥を想像した私は、それを掻き消し、そのタイミングでその鳥の外観を調べたのだ。

その作品にも「黄色い嘴」と書かれていたと記憶しているが、実際に目の前で羽を掃除している、その嘴はオレンジに近い。

椋鳥たちは探索を終え、コンクリートで舗装された道を挟んだ向こう側、大きな原っぱの脇の木陰に移動し、10羽ほどで集まって、それぞれ震えるようにして羽を掃除している。何羽かは、チーチーとモールス信号のようなリズムで鳴いている。その声に気づくと、公園のあちこちからその声がしていた事にも意識が及ぶ。彼らも、ずっとその信号を発信していたというのに、それまで気づいていなかった。

耳をすまして声のありかを目で追うと、どうやらいくつかの大きな集団が存在しているようである。その中でもとりわけ、高校の時の全体朝会に集まった、黙ることを知らない生徒たちの騒ぎを思い出すような集団を見つけた。原っぱのなかに、ドーム状に葉をつけた大きな木があった。